2011年08月01日

情けの幕切れ…

私は…所詮それほどしか
思われていなかったのですね

初めから信用なんてしてませんでした

いつかこんな日が来ると
思っておりました

でも
こんな終わり方をしなきゃいけないほど
私はあなた方に
ご迷惑をおかけしたのでしょうか

闘病生活になった時も
きちんと言いましたよね

『入院する事になり
病院の中におりますので
落ち着きましたら
連絡します』

そして

『了解』

と 言ったのは

あなた方ではないのでしょうか

私は…
たとえ必要とされなくとも
そこで生き甲斐と言える事をやるために
体作りをしなければ と
頑張ってきたつもりです

裏稼業なんて
忘れられるくらい
楽しかったあの頃に戻りたくて…

でも
幕切れは訪れた
病院を出た瞬間に…


『あんたさ
荷物どうすんの?』

ああ…
もう必要じゃないんだ

そう思った私は
本所属の方の劇団と
紹介してくれた方に連絡をしました

本所属の方は
座長さん←師匠が電話に出なかったため
親しい座員さんに相談を持ちかけました

お二方とも
同じ意見を下さいました

『あんたが母ちゃん抱えてる事も
病気になった事も
何もかも知った上でそう言うなら
出方次第で手を切りなさい
無理している必要はない』


母ちゃんも
もう無理はしてくれるな
役者は続けても
何も無理してあそこにいなくてもいいだろ…
今は体が大事だから…

そう言うものですから
悩みましたが
身を引こうと決意しました
そして…
劇団自体が解散というか
専属を辞める事を知り
ならばなおさら…と
荷物を引き上げに行きました

そこで私は
人の裏を見る事になりました

私は頻繁に使う物は
楽屋に置いておりました

立ち役←男役用の着物
女形の帯

肌襦袢と腰巻き
腰紐や足袋…
扇子3本
髪飾り類
短刀
旅支度道具一式←ひとつに纏めて
そして組紐やら…

これはひと纏めにして
かごの中に入れていました
腰巻きや紐類
手拭いなんかも
全部袋に入れて…

白鞘←短刀の長いやつ
やくざものの刀
差し傘…三度笠…
草履…下駄…

これらの物
刀類や傘
草履類なんかは
確かに置き場所を共有させていただいておりました


私の手元に戻ってきたのは…

部屋に置いたまま
使わなかった着物…
洗濯したまま
干して帰っていた肌襦袢が数枚
そして小道具の徳利
やくざものの刀
三度笠
かつら

そして化粧道具と私物…

自前の舞台道具の大半が
姿を消しておりました

腰紐から
立ち役用の着物まで…

『楽屋には
何も残ってないよ』

師匠のお下がりだからと
どんなに襟がボロボロになっても
使っていた立ち役用の
黒襟の肌襦袢…
襦袢の裾あたりに
師匠の上の芸名
『誠』の文字が書かれた
忘れ形見…

奥様が下さった
赤い襟に可愛い柄の入った女形の襦袢…

母ちゃんが
唯一好太郎に渡さず
とっておいてくれた白鞘…

もう使わないから
使えと言って
出してくれた高価そうな女帯…

大阪まで行って
買ってくれた絹地の白い傘…

3点セットで買ってくれた
花かんざし…


みんな…
どこへ行ったんでしょうねぇ…


『半年も音信不通ってあるか』

『預かってる方の身にもなってごらんよ』

私…

連絡入れたのに
なぜお二人から
責められなきゃいけないんですかね

『どこからどこまでが
ちあきちゃんの物か
わかんないから』

いや…
前に長期休暇をいただいた時は
小物類全部
部屋にありましたけどね

『かつらが戻ってきただけ
マシと思え
うちは木戸←芝居で使う
木で出来た格子戸
盗られて探してるのに
本当なら盗られてんだから』

腹立ちを通り越して
言葉が出ませんでした

頂き物や借り物は
いりませんが
自前の物まで奪われるなんてね

『けじめ着けないとね』

ええ…
そのために来たんですから
腹立ちを抑えて
言いたい事も言わずに

『…よくしていただいたご恩は
決して忘れません
今までありがとうございました』

三つ指ついて
頭を下げて…

病気になる前の
一月分のお給料もなく

『まぁ元気でやりな』

私は…
再び頭を下げて
何も言わずに立ち去りました

奪われた物…
悔やんでみても
返りはしませんが…

よくまぁ…
わからないで済まされたものです

今考えれば
三度笠と刀が舞台裏から出てきた時点で
真相はわかっていたはず…

しかしもう
返して下さいの言葉すら
出ませんでした

言ったところで

『そんなもん知らない』

そう言われるのは
目に見えていたから…


劇団勤めなら
何かしらは姿を消すよ…と
親父は私に言いましたが
こんな終わり方…

人のする事でしょうかね…


師匠には…
あの場所へ行く事になった事から
一部始終
すべてを話すつもりです

着物より
忘れ形見を奪われた事が
何よりも悔しくて…

食事も摂れない状態です…


明日から…
さらしで腰紐作りやら
肌襦袢作りやら…

和裁の勉強をしなきゃです…


何かもう…
生き甲斐を奪われ
役者の命とも言える衣装を奪われ

殺されたような気分です…

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Posted by 愛嬌ちあき at 01:37│Comments(2)リアル
この記事へのコメント
記事を読む限り、なんだか半年前の僕の状況とよく似ています。

詳しい事情は分かりませんが、今はジッとこらえて、新たな方向へ進むべき時なのかもしれません。自分を信じるしかないです。
Posted by みあ太 at 2011年08月01日 05:17
みあ太さん

コメントありがとうございます
出会いもあれば別れもある

表もあれば裏もある

…裏切りなんて
つきものなんですよね…

新しい道…ねぇ…

どうしても芝居を捨てきれない人間には
新しい道しかないんですよね…
Posted by 組紐屋のちあき†観察中…† at 2011年08月04日 00:13
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